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他人に恋愛感情を抱いたことがない高校生・纏(まとい)。アセクシャルだと思い込み、感情を抑えて暮らしていた彼女が、教習所で出会ったバイクに乗る年上の女性・百合子との交流を通し、初めて“自分の心の揺らぎ”に気づき始める。穏やかに、だけど確実に心が揺らぐ導入が、読む手をすっと引き込む。
纏にとって初めての「特別な存在」である百合子との穏やかな時間は、友情とも恋ともつかない曖昧な輝きを帯びている。初めて向き合う感情に戸惑いながらも、その変化を受け入れようとする纏の内省が丁寧に描かれ、極力抑えられたやり取りの一つひとつが胸に静かに響いてくる。
展開としては派手さから遠く、それでも心に留まるのは“名前を持たない感情”の存在そのもの。言葉にしない声、見慣れた景色の中に現れる心の揺らぎが、作品全体に深い余韻をもたらしている。恋か友情か、あるいはその間にある感情をそっと描写する一冊。