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わすれなぐさ レビュー

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『わすれなぐさ』は、女学校を舞台に陽子・牧子・一枝の三角関係を描く古典調の物語。制服と寄宿舎の空気が、女の子同士の親密さに独特の陰影を与える。抑制の効いた語り口が、百合の香りを静かに広げる。構図も端正。

言葉少なな交感と手紙の往来が印象的で、百合のゆるやかな支配と解放が波のように寄せては返す。恋愛の名を口にしない沈黙が、かえって強い磁力を帯びる。季節の移ろいが感情の階調を支える。視線の重なり、差し出された手、外されたボタン。微細な身振りが百合の濃度を上げ、読者に読解の余白を渡す。百合の古典らしい節度も感じる。

一方で人物の内面描写が古風な記号に寄る箇所があり、現代読者には距離が生まれる可能性もある。それでも百合の核心は揺らがず、恋愛の痛みと気品が同居。構成は端正で、章の切り方に無駄がない。注釈や背景情報が補われると、文脈の通りがさらに良くなるはずだ。装丁と解説も読後の余韻を深める。