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『エプロンと加瀬さん。』は、上京と進学を前にした二人の揺れを描く連作。新しい街への期待と不安が、女の子同士の関係に微妙な影を落とす。上京準備の小物やエプロンのモチーフが、百合の生活感を添える。
元カノの噂や将来の進路が、百合の甘さに現実味を混ぜる。料理や文化祭の作業といった共同作業が、恋愛の実感を育てる装置として機能。視線の揺れや小さな嫉妬が、関係の温度を確かに示す。会話の間や手渡しの所作に、百合特有のやさしい緊張が宿る。恋愛の確度を上げる小さな合図が積層し、百合の厚みが増す。
一方でイベントが連続し、心情の掘り下げが薄く見える場面もある。とはいえ作品全体の清潔感は保たれ、百合のやわらかさが持続。恋愛の選び直しを大仰に語らない設計に好感。シリーズの転換点となる一冊。装丁と余白の扱いも良く、頁をめくる呼吸が気持ちよい。読者の年齢層を選ばず、移行期の不安を丁寧に包む。