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10年間の孤独と息苦しさを背景に、自らを解放するためレズビアン風俗を訪れる選択が描かれる。赤裸々な体験記として、百合の文脈を越えた自己受容の物語となっており、読者を強く引き込む。女の子同士の接触が持つ癒やしと回復の力を冒頭から直截に提示する。
描写は生々しくも丁寧で、恋愛の枠組みでは語りきれない感情の揺れが記録されている。百合的な親密さは安心感と肯定感を伴い、自己否定を和らげる作用を持つ。語り手の視点が読者に近く、共感と追体験を促す構造になっている。
構成は体験の前日譚から後日譚までを段階的に追い、変化のプロセスを明確に示す。社会的スティグマや性の多様性を批評的に捉え、個人の選択を肯定する姿勢が貫かれている。百合の領域における実録作品として、恋愛観や生き方を問う意義深い一冊。